所好四号序文
臥遊堂沽価書目四号をお届けいたします。
今回、部立は行っておりませんが、近代資料がややまとまって手に入りましたので、近代以前と近代という二部構成にいたしました。目録作りの妙味でしょうか、僅々二百点に過ぎない収集品にも、千数百年の時の流れが、さながら時代絵巻となって眼前に立ち現れる、そんな感覚を味わうことができました。近代以前は、為政者は変わるものの、仏教に始まり精神文化に向き合った歴史であり、「戒と快」が陽となり陰となってさまざまな作品を織り成します。一方で近代は、余儀なく眼を外へと転じさせられ、利害が直にぶつかる激動の時代となりました。過去を振り返った目で今を見つめ直してみますと、内なる自分と対話しない日はありませんし、コロナ禍をはじめ実社会に背を向けるわけにもまいりません。過去が蕩々と今に流れ込んでいる。故人の精神を容れ、時代を目撃してきたこれらの遺物を通して、温故知新ということを改めて体感した次第です。どうぞゆっくりご覧下さい。
令和二年十一月初旬 野村竜夫拝